食べ聞かせ



節分 「恵方巻き」

節分「恵方巻き」

元々日本人は災害や疫病などの厄災を『鬼』という想像上の生き物になぞらえ

時に恐れ、時に敬ってきました。

日本には四季があるので、厳密にいうと節分(季節の分かれ目)は四度あるはずですが、
現在では主に春の季節、つまり立春の節分を『節分』と呼びます。
季節の変わり目には鬼(邪気)が生じると言われ、それを摩滅(まめ)する、
つまり「まめ」で追い払うという洒落も含みつつ、現在の形になったようです。
また、鰯の頭を柊の枝に刺し、玄関の戸口に挿しておくと、
鬼(厄災)が入って来ないという言い伝えもあります。
 
一方で、『節分にはその年の恵方を向いて
丸々一本の巻き寿司を食べるとその一年を健康に暮らせる』という風習もあります。
この節分の風習は関西が発祥だと言われています。
この時に食べる巻き寿司を恵方巻きといい、
七福神にちなんで七種類の具を入れるのが正統です。

元々この恵方巻きは海苔問屋が海苔を売るために始めたそうですが、

今では関東のコンビニエンスストアでも恵方巻きの販売を行っているくらい、

全国的に広まっているようです。

 
大阪で生まれ育った私にとっては、
幼い頃から恵方巻きは節分にはなくてはならないものでした。
節分の夜、家族が食卓を囲み、それぞれが手に恵方巻きを持ちます。
「はい、準備できたね。じゃあ、今年はこの方角を向いてね。

しゃべらずに一本食べれたら一年間いいことがあるからね。」

母が神妙な顔をして家族に注意を促します。
「はい、いくよ!せーの!」
という掛け声とともに、家族四人黙々と恵方巻きにかぶりつきます。
私はしゃべっちゃいけないと思うとなぜか可笑しくてたまらなくなり、

必死で笑いを堪えながらひたすら恵方巻きをかじります。

 

すると、そんな自分が余計に可笑しくなってきて、笑いを堪えようとして肩がふるえます。

ふと見ると、母の肩も揺れています。その肩の揺れが大きくなったかと思うと突然、

「むぼふっ!!」

と、何とも言えない音を発して、母が恵方巻きを吹き出します。
それを見た私も間髪入れず吹き出します。
鼻の奥に米粒が入り、涙が止まらないのと同時に笑いも止まりません。

そんな私たちには目もくれず、姉と父は黙々と一本完食です。

そんなこんなで、いつも笑ってしまう母と私は、毎年厄除けにならずじまいでした。
 

大人になった今は、主人と二人で恵方巻きを食べます。

かつて母がしていた

「はい、いくよ!せーの!」

の掛け声は、今は私の仕事になりました。


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