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| 子供の頃、毎年年末になると家族でお餅をつきました。 |
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| ･･･といっても、臼と杵でぺったんぺったん･･･ではなく、 |
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| 悲しいかな昭和の名わき役、『家庭用餅つき機』が代わりにぺったんぺったんと |
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| 搗（つ）いてくれていました。 |
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| 搗きあがった熱々のお餅を手でちぎり分けるのは母。 |
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| 「熱い熱い！！」と言いながら、母は親指と人差し指で作った輪っかで、 |
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| お餅をチョキンチョキンと器用に切っていきます。 |
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| 見ている私達は「お母さん火傷してしまうんちゃうかな」とちょっと心配になります。 |
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| そうして母がちぎったお餅を丸く丸めたり、あんこを包んであんこ餅にしたりするのは私と姉。 |
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| 意気揚々とあんこを包もうとする私達に、 |
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| 「三宝さんとお鏡のが１番やで！あんこ餅は後！！」 |
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| という母の鋭い指導が入ります。 |
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| 手早くやらないと、お餅はどんどん硬くなります。 |
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| 海老餅と呼んでいた干海老入りの『のし餅』は、父の大好物。 |
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| だからのし餅が硬くなってから薄く切り分けるのは父の仕事です。 |
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| 当時は家では縦のものを横にもしなかった父ですが、 |
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| 海老餅を石油ストーブの上でぷっくりと香ばしく焼くのは進んでやっていました。 |
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| そうして家族総出で作ったお餅は木のばんじゅうに入れて乾燥させます。 |
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| 添加物の入っていないお餅は、すぐにカビがついて食べられなくなりますので、 |
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| 皆で競うようにお正月の間中お餅を食べるのです。 |
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| 食べきれない分は、父が小さく割って、かき餅にしてくれます。 |
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| 私にとって、年末とお餅は切っても切れないもので、 |
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| 毎年年末には当たり前にお餅をつくものだと思っていました。 |
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| でも私と姉が大きくなるにつれ、いつしか家でお餅を搗くこともなくなりました。 |
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| 私が年末の餅屋のアルバイトでお餅を持って帰ってくるようになったからでしょうか。 |
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| それとも、それぞれが仕事をもち、家族がなかなか揃わなくなったからでしょうか。 |
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| 少しの寂しさと共に、慌ただしく市販のお餅を購入する年が何年か続きました。 |
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| そして姉も私も結婚し、それぞれに家庭をもつようになったわけですが、 |
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| 実は数年前から、実家ではまた餅つきの会が復活しています。 |
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| その理由はというと、姉に子供が生まれたから。 |
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| 子供にお餅つきを見せてやりたい、食べさせてやりたいという両親の想いです。 |
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| 時代は流れ、変わって行きますが、こんな風に再び甦る家族の風景もありますね。 |
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| 今度は私達が親として子ども達に色んなことを伝えていく番なのだと |
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| 改めて感じる年末の風景でした。 |
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